稽古の前の稽古

 稽古の終わる頃には雨になった。金曜日以外、自転車置き場に一台のミニチャリがいつも停まっている。高校を卒業してからは翔太が毎日自転車で通うようになった。
 今の時代、自転車で通う道場生などいない。皆、車で来る。中学生になっても高校生になっても大学生になっても車で来る。親が連れて来る((´∀`))昔は車で来る高校生などいなかった。
自転車を見ていると極真現役時代のひとりの偉大な先輩を思い出さずにはいられない。その先輩は毎日自転車で道場に通って来た。大学入学と同時に入門し、二年間一日も休まずに道場に通った。大学3年の時、茶帯で初出場した全日本大会で8位入賞を果たした。大学4年の時、全日本4位に入賞した。大学卒業就職と同時に現役を引退した。青帯の時、初めて見る全日本大会で準決勝戦で戦う先輩の雄姿を見て、自分も全日本に出たいと本気で思った。自分が現役時代に一番影響を受けた先輩である。自分が一番の目標にした先輩だった。その先輩がいたからこそ今の自分がある。
稽古に来る前から実は戦いは始まっている。稽古が始まった時、もう既に勝負は決しているのかもしれない。
 翔太がやっと車の免許を取った。ちょっと寂しいが、もう自転車で来る事はないかもしれない。
 自分の稼いだ給料で会費を払い、自分の足で道場に通うようになってからが本当の稽古である(自分はそう思う)。願わくば、少年部達には大人になってからも空手を続けて欲しいものである。

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